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2015年1月11日日曜日

値段より価値⁉

 今朝TVを見ているとイギリス人女性が日本の漆職人として漆の文化を守っているという内容の事が放送をされていました。その女性によると日本人が古い物や伝統的なものに目を背けすぎで、それが気になるという内容の物でした。

 確かに漆の事は英語で『JAPAN』というように日本を表す言葉そのものが英訳として載っているのだから日本でポピュラーであって当たり前と考えていたのでしょう。来日してからその実態を見たときにビックリして自分がこの文化を残さなければと考えたそうです。

 現在は中国製の漆が97%を占め、国産はたったの3%だそうです。35年ほど前にアメリカで知り合った友人の祖父に会いに帰国後秋田に旅をしたときに、その方が人間国宝として漆の文化を守っているという話を伺い感銘を受けた覚えがあります。

 その時の経験として、塗りあがった漆に光を当て天井に反射をして見せ、その天井に映った光に刷毛のムラや跡があってはいけないと教えられ、その天井に映った光の鮮明さは今でも覚えています。その時に耳が悪いと三半規管がやられている可能性があるので真っ直ぐには塗れないといわれた覚えがあります。

 確かに宝飾品の職人でも三半規管が弱い人間は鑢を真っ直ぐには掛けられないという事実はありますので、成程なぁ・・・職人の世界は正に匠の世界だなと感じておりました。それらの哲学にも匹敵する世界が軽んじられている現在では価格が安ければ良いという風潮があります。このイギリス人女性は『価格より価値を知る事』、『良い意味での無駄の意味を理解する事』を日本人に提案をしておりました。

 全く耳の痛い発言で、昨今の話題になっている異物混入問題にしても、安すさを追求し、売り上げを伸ばそうとするあまりの問題でもあるような気がします。世界では一見無駄な事と見えることが日本人は文化として残してきました。茶道であったり、華道の世界観は、知らない人には一見無駄な動きや作法のような気さえします。

 価格だけを要求することは消費者としてのリスクがあることは以前にも書きましたが、正に無駄に見えるようなところで、物の安全性だったり、差別化がなされていっているのだと考えます。

 宝飾品に関しても。まったく同じことがいえ、価値を知らない人にいくら価格を引いたところで意味がなく、それ以上に販売する側は物の価値を説明し、啓蒙するという事がビジネスであるはずなのに、それを省き、価格を下げる事により、販売を成立させようとしています。

 勿論、販売側に知識がないという事は一番の理由なのですが、プロ意識の欠如が一番大きな問題なのでしょう。そしてそのツケが消費者に回っているのですから、消費者が宝飾品に特別な意味を持つわけがありません。先達の人々の努力を無駄にするとともに、その財産を無にしてしまう行為は業界を問わないのかもしれません。

 日本製の漆は手間暇がかかっている事もあり、厚いお汁を入れても熱さが外側に伝わりにくかったり、漆ならではの特徴を生かし、その土地の根ざした伝統文化を守ってきた世界です。しかし、日本の漆は100年もつといわれていますが、中国産の数年でダメになるものでも良いと考える人が多くなってきたことも事実なのでしょう。ここでも価格が安いという事が最大の理由ですが、それなら無理に漆などを使わなければ良いのではと考えます

 100年もつものとその文化と伝統を感じるという事が物を持つという意味合いと考えますが、それの真似をするためだけに持つ価値は本来の価値とは言えないと思います。つまり、イミテーションでは本来の意味を理解できるはずはないという事です。

『値段より価値、そして、無駄の意味を知る』
本当に良い言葉ですが、どれくらいの人が理解を出来るのでしょうか?

 安さや売り上げを狙う世界では目が届く訳がありません。『身の丈の考える』という言葉は日本人が昔最も口にした言葉だと記憶しています。今日もどこかで異物混入騒ぎが起きているのでしょうね。消費者も安全や価値はタダではないという事をもっと理解をする必要があります。

 安い物には理由があります。そして、価格を引けるものにはからくりがあります。

 勿論、選択はそれぞれの自由ですが・・・。
 

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