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2015年12月31日木曜日

大晦日の物語⁉

 もうどれくらい経つのだろう。開店をして間もない大晦日の事でした。その頃は通常の小売店よろしく、おおみそかも開店をしておりました。

 宝石の商売は毎月の売り上げも大事だけれど、大晦日の閉店間際に一年分の売り上げが上がる可能性もある商売だと諸先輩から聞いていたこともあり、師走の終わりのギリギリまでお店を開いていました。

 その年の12月の初めであったと思いますが、若い女性が店頭を除いており、スタッフに声を掛けられると何気に店内に入ってきました。

 『何かお探しの物でもありますか?』
スタッフの問いかけにその女性は
『ダイヤモンドの指輪を探しています。』
との事で
『どんなものをお探しですか?』
『実は私は間もなく結婚をするのですが、結婚式を上げない予定なので、その分ダイヤモンドの指輪にお金を掛けなさいと相手の方から結われているんです。』

 『どれくらいのものをお探しですか?』

『相手は年が離れているので、一緒に出かけたときに恥じをかかない程度のものにしなさいといわれています。』

『そうですか。其れでは1ctくらいでしょうか?』
とスタッフが言うと
『実はそれがどれくらいなのか私には解らないんです。其れで、店頭を除いていたんです。』

『本当はお相手の方がいらっしゃってお選びになった方が良いとは思いますが、店内を覗いてもし気に入ったものがあればそれをお相手に伝えたらいかがですか?』

このアドバイスに従い女性は店内を色々と見て歩き
『気に入ってのがあったんですが、ダイヤモンドってお高いんですね。』

『やはり、お安いものではありませんのでお相手の方のご予算にもよると思います。』

『また出直してきます。』
といって彼女は店を後にしました。

その後連絡もなく等々大晦日を迎え、午後の6時も過ぎそろその店じまいの準備にかかろうとした時です。
『まだ大丈夫でしょうか?』
その彼女が店に中をのぞきながらこちらをみていました。

 直ぐには彼女であることが解らなかったのですが、
『先日ダイヤモンドの指輪のご相談をさせて頂いた者です。』
こちらの合点がいき
『先日はどうも…。』

 やはりこちらのお店で頂きたいのですが彼にはまだどんなものが良いかいっていないという事で怪訝に思っているこちらの事を察したのか、
『彼が後30分くらいで来れるという事なんですが、お店の方は大丈夫でしょうか?』

『大丈夫ですよ』

 やがて30分を過ぎて
『夜分にすみません』
と彼女とは20才以上は離れているであろう男性がお店に入ってきました。

 『この女がこの店で気に入って物があるという事でしたので、彼女の気に入ったものを頂きたいんですが・・・。』

 彼に促されて彼女が指をさしたのは2ctsのたて爪を少し華奢にしたもののでした。私たちも何を選んだのかを知りませんでしたから多少ビックリをしましたが、一番びっくりをしたのは彼の方だったでしょう。

 『えっ、ちょっといいお値段がするね。』
という彼の声に彼女は
『アッ、それじゃなくてもいいんです。』
と慌てておりました。

私がすかさず
『ご主人になる方にお出かけになる時に恥をかかさない程度のものというかのじょのきづかいがありまして、私がそれならばとお奨めしたものです。申し訳ありません。』

 『そうですか。社長がお見立ていただいたのですか。私自身もそのような事を彼女に言っていたので、彼女もそう思ったのでしょう。でも年も離れていますから、他に一緒に出掛けて彼女に惨めな思いをさせたくないのでそう思ったんです。』

 『たぶん彼女も、そう思ったんでしょうね。お若いのにダイヤモンドというより貴方の事を前提に考えたんだと思います。でも少々私が出しゃばり過ぎたようです。』

 『いいえ、社長がご経験からそれをお勧め頂いたのでしたら。それを頂きます。』
傍らでホッとしたようなべそをかいたような様相でいた彼女の顔をまだ忘れることができません。

今では2児の母になり落ち着いた雰囲気になった彼女を時々街中で見かけることがあります。
http://ameblo.jp/diamonrow

 

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