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2011年2月23日水曜日

ダイアモンドとの出会い。

  昨日、北海道にいました。

いつものように30年来の取引先であり、友人である人物といつものように食事をともにして
いました。その人物が

『高木さんはなぜダイアモンドの仕事をする事を決めたの?』

彼は多角経営をもっとうとし、実際に成功を治めている。


 もうダイモンドと出会って40年間経とうとしている。

 学生の頃、実家が時計、メガネそして宝石を営んでいた事もあり、学生時代のアルバイト
として一時宝石の問屋の仕事を手伝っていた事があります。その頃は宝石に対してはこれと
いった感情もあこがれもありませんでした。

 大学を卒業して縁あってH貿易という、当時知らない者はいないというくらいの輸入時計や
輸入宝石の会社に偶然にも受かり、勤める事となりましたが実家が同じようなものを扱って
いましたので、格別に興味を抱く事もなく当初は新人が皆配属される商品部に配属され、毎日
時計の名前と特徴、そしてベルト付という毎日でありました。

 ある朝、いつものように七時半ころ出社すると同じフロアの反対側の宝石部に何やら人影
があり、近づいてみると宝石部の主任のW氏がダイアモンドを並べて、いわゆるグレーディング
をしておりました。

『おはようございます。』

『ああ、おはよう。ずいぶん早いね』

『ええ、ヒマなものですから。ところで、今日は早くに何のお仕事ですか?』

『今日午後から海外出張なので、これを片づけていかなきゃならないんだ』

『そうですか、大変ですね』

こんな会話をしながらその場は終わり、それから2週間後

『おはよう、高木君』

いつものように7時半ころ出社するとW氏がニコニコしながらこちらに声をかけてくださいました。

『あっ、おはようございます。お帰りになったんですか?』

『うん、昨日ね。ところで、髙木君は毎朝早く来ているの?』

『そうですね。ヒマですから・・・。』
と前回同様の返事をすると

『それなら少しダイアモンドの勉強をしてみない?』

『えっ、どういう事ですか?』

『実は、今回結構買付をしてきたんだ』

W氏は買付分のダイアモンドのソーティング(見極め)をしなければならないのでしばらくの
間、早く出社をしなければならないから一緒にダイアモンドを見てみたらという事でありました。

『ありがたいですね。そろそろ時計の事もほとんど覚えて、次は何をしようかなあ・・・と
思っていたところです。でもいいんですか?』

『就業時間外でやる事だから、キミが良ければ一応上司に言っておくよ』

『ありがとうございます』

その数日後から輸入されたダイアモンドが入ってくるまでは毎朝基礎勉強としてアメリカ
宝石学会(G.I.A)のドリルとにらめっこをしながら過ごし、入ってきてからは毎日のように
ダイアモンドを見て過ごしました。

その半年後、宝石部に呼ばれる事となり、本格的にダイアモンドを見始めたある日W氏が

『キミは目がいいね。もしかしたら天職かもしれないよ』

と言われ、何の事を言っているのか解らないままに照れていると

『このダイアモンドを見てごらん』

そこには始めてみたピンク色に輝くダイアモンドがW氏の手のひらにのっていました。

『これはね、わが社の財産で名前が付いているダイアモンドなんだ』

『エッ、そうなんですか?』

『そう、《アフリカの夕焼け》という 6.12ct あって、フローレス(無疵)でアイデアルカット
(理想的カット)なんだよ。』

『へ~、すごいですね』

『これを見てみたら? 実はこれ規定の見方では無疵なんだけれど倍率を上げるとあるところに
ピンポイント(小さな点)があるんだよ。私もふざけ半分で顕微鏡で見たら発見したんだよ』

本来ダイアモンドのグレーディングは十倍のルーペで熟練のグレーダーが発見しうる範囲と
なっていますから、その中では無疵という事ですから発見する事は非常に難しい内胞物という
事になります。

『実は私もピンポイントのある場所を特定してみたらルーペでも見る事が出来たんだよ。
ここん所キミを見ているともしかしたらキミにには発見できるかもしてないと思って出してみたんだ』

『そうなんですか、是非見せてください』

それからというもの昼食もとらずにその神秘のダイアモンドにくぎ付けでした。二日目の
お昼時間の事です。ずーっとダイアモンドを見ていて一点に微妙な違和感を感じそこを中心
にピントを合わせ続けている時でした。
(アッ、見えた!?)

私は興奮しながらその事とその位置をW氏に報告をしました。

『間違いない、その場所だよ。良く見つけたね』

『ありがとうございました。』

この『ありがとうございました』には沢山の意味がこもっていました。この間ダイアモンドを
みている間にダイアモンドに入って泳いでいるような錯覚に陥ったり、凄さを感じたり、美しさを
感じたり、何よりオーバーに言うと語りかけられているような気になったり・・と色々な経験を
させてもらい、この例えようのないサーモンピンクの美しいダイアモンドは短期間に色々な
経験をさせてくれたような気がしました。

本当は仕事としてどうなんだろうと思っていた私に決意をさせてくれた瞬間であり、未だに
この石を超える石には出会った事のない私にとっては《奇蹟の石》でした。

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