ページビューの合計

2014年7月22日火曜日

条件と価値⁉

 先週末、お二方のお客様がご来店になり、一方のお客様がお持ちになったペンダントをもう一方のお客様にお見せになっておりました。

 以前お店でお会いになり、お造りになったペンダントがいかに気に入っているかを説明していたためにもう一方のお客様がそれを是非見せてくださいという事になりこの状況になったものです。

 『すごいの一言ですね。こんなジュエリーは見たことがない。ザ・ジュエリーという感じですね』
驚嘆とともにこれ以上の賛美はないのではないかというほどの驚き様でした。

 5ctのダイヤモンドを真中に周囲に七宝を施したペンダントは4.5cmほどの直径の円形のものでそれこそアンティークジュエリーのような趣があり、美術館にあってもおかしくないようなできばえではありました。

 宝石の条件として美観性、希少性、耐久性、携帯性、換金性の話はよくしますが、このことを理解し、お客様に説明でき、いかに納得いただくかが販売員の実力によるところが大きいのですが、素材だけの価値を説明するだけでもかなりの実力を必要とするものなのかもしれません。

 例えば、ダイヤモンドの4Cが説明できたとしても、それは美観性の説明にすぎません。ましてや美しさに関しては説明されなくてもお客様は解っているわけです。つまり、宝石というのは価値そのもの代名詞なのですから条件の其々を丁寧に説明ができ、お客様が納得をいけば、あとはお客様の懐具合という事になる訳です。

 その上で、ジュエリーになるべくしてマウンティングが施されるわけですが、その造りであっても見た目においてはお客さん自身がご理解いただけるものですから、その裏付けとなる造りのご説明ができるかどうかがカギになる訳です。

 ジュリーは単なるハード面だけでは勿論ありません。そこにはソフトの裏付けがあることにより、一層お客様の心に響くものが出来るのだと思います。

 『ストーリーが優先されるものがジュエリーであり、価格が優先されるものは単なる商品である』
と以前書いたことがありますが、宝石に物語を付け加えることによりジュエリーは完成されますがその物語に嘘やまやかしがあっては、せっかくの宝石に傷がつきます。

 言葉を付け加えなくても物語を感じてもらえるようなジュエリーをいつも心掛けたいと思っているときに冒頭のような状況はとてもうれしく感じ、宝飾商としての冥利に尽きる訳です。

 宝石を扱う人に考えてほしいことは、
『心のないジュエリーは他の商品にとってかわられるという事です』

 売り手の思いやりをお客様にいくら差し伸べても、ジュエリーそのものに心がなければ長くは続きません。つまり、お客様自身が心に響いたものでなければ、お付き合いだけになってしまいます。
極端な言い方をすれば販売員を仮に嫌っていてもお客さもの琴線に触れたジュエリーは売れるのだと思います。

 価値とはある種、顧客が求める条件を満たすことにあるのであって、その中にあって値引きということは条件として入っていないという事を知ってもらいたいと思うのです。
『中には値引きをしなければ買わないというお客様もいますから』
という担当者の話をよく聞きます。

 それは単に販売側を下に見ているだけで、ある意味価値とは販売側のレベルで決まる訳ですからその穴埋めをさせられているだけですから、もっと努力をするべきなのでしょう。

 値引きというのは条件でも価値でもなく、単なる着火剤みたいのものですから、それがあまりにも大きすぎると危険を感じるのは誰しも同じだと思います。

 ちなみに冒頭の家が一軒買えそうなジュエリーに関してはお母さまの形見に身に付ける方法を問われて、普段では受けない七宝の特注を受けたものですが
『これで普段身に付けておくこともできます。タンスの肥やしにならなくて済みますし、何よりもオリジナルだという事が気に入っています』
と言ってくれたことにこちらが感謝をした次第です。

 価値とは受け手の条件を満たすという事なのですが、宝石はそのものが価値を表しているのです。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿