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2014年7月15日火曜日

人を結ぶもの⁉

  2004年秋、アメリカ合衆国コネチカット州グリニッジの駅に降り立ちました。マンハッタンから小一時間ほどのベッドタウンで多くの通勤客がこの駅からマンハッタンに向かっています。イスラエルからニューヨークに寄り、知人と待ち合わせをし、この駅におり立ったのです。

 この知人は日本でサービス業の派遣を行っており、この夏に話題になった本を片手にこの地を訪れることを切望していたのです。結果ニューヨークを訪れる予定だった私に付き合ってほしいとの事でした。

 話題になった本とはタイトルは忘れましたが『小売業とは?』といった内容の本でした。そこにはここでのサービスが話題を呼びニューヨークタイムスにも紹介されたとなっていたのです。その内容とはこの紳士服を取り扱うお店がお得意様からひと月前ほどに注文を受けたものをマンハッタンのオフィスに届けたところ、注文したものは紺のカシミヤのコートでしたが手元に届いたものは同形の黒のものでした。

 その顧客は三日後にはヨーロッパに向かいその時に身に付けていく予定のものだったそうです。そのミスに気付いた店主は深くお詫びをして必ず渡欧には間に合わせますという事でその場を収め、直ちに手配を行い、何とか間に合わせたという事でした。

 その内容とは普段使っている下請けだけではなくお金に糸目を付けず、あらゆるところに手配をし、出発の日の午前中に仕上げ、それをヘリコプターを使って届けたという内容でした。一般的な米国のお店だと間違ってしまい、出来なかったので仕方がないでしょうという事になるので話題になったのでしょう。

 駅から数十メートルのところにこの店はありました。お店と言っても規模は大きく1フロア200坪ほどで2フロアを店舗としていました。このお店を訪れ店員にその旨を告げると、たまたまオーナーがいるので会ってみたらどうですかと勧められました。

 しばらくすると、二階から白髪の紳士が笑顔いっぱいに降りてきて握手を求めてきました。内容を説明すると
『実は、20年ほど前に日本を訪れて百貨店に行ったときに(Mazal)という文字を目にしてその売場に近づくとダイヤモンドの売り場でした。ユダヤ人である私にはちょっとうれしいことでしたので、思わず家内に安いものでしたが購入を決め、帰国の日の午前中にはサイズ直しが上がるという事でした。当日、取りに行ってみると、なんとサイズが違っていたのです。しかたなく諦めようとしたのです・・。』
彼の話は続き
 『何時のフライトですか?』と販売員に問われるままに
『私のフライトは午後5時、もう6時間もないからやむ得ない』と彼がいうと
 『何とか間に合わせます』と販売員が言って、
その後、その販売員は見事それを実行してくれたそうです。

 『つまり、日本で学んだ感激と経験を今の仕事に生かしたのです』
という括りになり、
 
 『その時の販売員の貴方がわざわざここへ訪ねてきてくれるとは・・・。』
私はハタと遠い記憶に中からその事を思い出し始めていました。

『なぜ、私だと分かったのですか?』

 『ちょっと私のオフィスに来てください』
と言いながら2回の彼のオフィスに通されると

 『この写真を見てください。毎日のようにこの写真を見ています』と彼、

 私は口から胃袋が出るのではないかというくらいにびっくりしました。そこには若き日の私の姿が成田空港で旅行客であるこのオーナーと肩を並べて移っている姿があったのです。

 『私はすぐにわかりました。そして大変驚きましたが最初は人違いかなと思ったのですが、ダイヤモンドのビジネスをやっているという事だったので間違いがないと確信しました』

 
 その時の様子はまだ忘れることが出来ません。その後彼と一時間ほど話をし、マンハッタンへ向かう為に駅に着くとその店の店員であろう人々がコーヒーを準備をしながら駅に佇んでおり、何をしているのかと尋ねると
 『間もなく帰ってくるだろうお得意様にサービスのコーヒーを用意しているんだよ』
という事でした。朝も通勤に向かうお客様に新聞とコーヒーを用意しているのだという事でした。

 勿論、一緒に行った知人もこの出来事にびっくりするとともに
『対応サービスは人の輪をつなぐものですね。良い勉強になりました』

 しばらくぶりにこの事を思い出し、書き出してみたのは自身も経験と年齢を重ねたために忘れかけた本来の日本の小売スタイルをもう一度認識してみたいと思ったせいかもしれません。

 日々反省は続きます。常客は己の人生を豊かにしてくれますよね。 

 ちなみにMazalとはヘブライ語で希望や信頼を表す言葉でダイヤモンドの契約締結後にこの言葉とともに握手を交わします。これは大きな意味があり、契約書類に優先しますので破棄することはできません。ユダヤ人が最初に『神』とかわした契約の時に使った言葉と言われています。

 我々ダイヤモンドマンには特別な言葉です。

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