宝石の本来の価値でいえばあまり第一条件には持ってこられないのですが『換金性』というのが実質的価値と言って良いでしょう。他の『美観性』『希少性』『耐久性』『携帯性』といった条件に関しては実質的価値の上に乗っかっての物です。
つまり、根本的には実質的価値というものはあまり表に出されてはきませんでしたから、それ以外の条件の曖昧とした情緒的価値である手に入れる人の誇りであったり、成果であったり、見栄なども含めた象徴的な物が価値のように創り上げられてきたものです。
しかし、ここ数十年その創り上げられた価値を損なわんばかりの売り方をしてきたわけです。つまり、ダイアモンドのグレードというものを筆頭に真珠でいえば『花珠』を始めルビーの『ピジョンブラッド』のようなような本来の表現の意味合いとは違う内容で鑑定機関も巻き込んだ形で誤魔化しながら業界はここまで来ました。
勿論、物事というものは何が真実かという意味では曖昧としていますが、過去の歴史を振り返ると何故に長い年月宝飾品が価値を持ち続けてきたのかという事を考えると、ある時は王位の象徴であったり、権力の継承者の証であったり、業績等の成果の褒章であったり、金メダルをはじめとした競技等の結果の証であったりと宝飾品としての意味合いを十分に造りあげてきたのです。
それらが希少性を含む物語とか造りの技術とかいったその価値を語られること無く、価格と買い安さをアピールされながら販売が行われてきたのですからその価値は必然として本来の価値は失われてきます。
実際には大粒ダイアモンド等の財産性や投資性などの本来の価値が謳われること無く、更にはそれ以外の情緒的価値さえも損なわれ、先人たちが創り上げた価値を積み木崩しがごとく崩しながら販売が行われてきたのが実情でしょう。
今後はやはり、宝飾品としての本質に触れながら販売をしていくことが求められ、更には消費者を上回る知識を持つことが販売者に求められることでしょう。宝石、宝飾の新たな価値を創り上げる事が出来るかどうかにより業界が生き残れるのかどうかの試金石ともなるのでしょう。
宝石の価値を語ることのできる人がひとりでも多く表れることを望んでやみません。それからの宝飾品なのですから・・・。