今、インドのダイアモンドビジネスが危機に面しています。それは勿論トランプ関税の50%という高関税に起因しています。
例年であればこの時期は米国のクリスマスセールに向けての準備のために大忙しなのですが現状のインド・スーラットの取引所は人の姿もまばらということです。
勿論、世界での優秀な商人であるインド人は手を拱いているばかりではありません。第3国を経由し、関税の低い国からの輸出を試みたり、ターゲットを中東ドバイに向けたり、欧州に向けたりしています。
ここで問題なのはアメリカはロシアとの貿易に積極的な国への高関税を示唆していますが、インドは歴史的にロシアとは近い関係にあります。現状モディ首相はトランプに対しても強い姿勢をとっていますので、なかなか解決の道はないということです。
今後を考えるとダイアモンドビジネスに関してだけ述べるとしたら、イスラエルなりベルギーにチャンスが出てくるのではないかと考えています。なぜならEUやイスラエルからの関税は抑えられていて、更にダイアモンドに関しては基本原産地証明をつけることにはなっていますが、ダイアモンド取引所を経由した時点でそれぞれの輸出地がそれに準ずることになるからです。
現状のダイアモンドビジネスはといえば、宝飾業を前提をすれば欧米、日本共に悪くはありません。しかし、中身を精査すると本来の宝飾業というより、ブランドであったり、ファッション業界に近い部分での売上が大きな部分を占めています。
さらに、ダイアモンドビジネスにフォーカスするとオーバーサイズを除く、1ctサイズのものの動きもあまりよくなく、商品が少なめの米国市場であっても堅調とは言えません。しかし、米国内研磨のダイアモンドはまだインド産のものよりは15%前後高めでもありますが、米国の大手独立系小売店は堅調を続け、委託からの売上は順調に推移しています。
しかし、全体的にはラパポートをはじめ、多くの基本となる相場よりは価格も高くなっており、ロシア産のダイアモンドのアメリカに制裁も引き続き行われる様相も呈しておりますから、しばらくは市場でのせめぎあいが続くと思われます。
デ・ビアスなども小規模なロットは市場から拒否をされることも多く、大粒の原石を中心に供給を行っております。そのことからも大粒サイズのものがしばらくの間市場の話題を占めるとは思いますが、絶対的な量の問題がありますので価格の問題がクローズアップされるとも思われます。
総括としてトランプ関税は今後もインドの研磨市場にダメージを与えるでしょうが、ダイアモンドという商品の性格上新たな動きを作り出すかもしれません。特に大粒サイズのものに関しては従来の取引方法に多くの業者は拘らなくなる可能性は出てくると考えられます。